手術室で働いているナースの中には、ラテックスアレルギーの患者さんに遭遇したこともあるのではないでしょうか?
手術室ではゴム手袋を始め、様々なラテックス製品を使用しているため注意が必要になりますよね。
また、果物アレルギーを持っている患者さんもラテックスアレルギーの可能性があるため注意が必要になります。
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ラテックスアレルギーは天然ゴムが原因
ラテックスアレルギーとは、ラテックス(天然ゴム)によって引き起こされるアレルギーのことです。
天然ゴムに接触することで、蕁麻疹やアナフィラキシーショック、喘息発作などの即時型アレルギー反応を起こします。
即時型アレルギーはIgE抗体が関係している
即時型アレルギーはIgEという抗体が関係しているアレルギーであり、天然ゴムなどのアレルゲンに対して、体内でアレルゲンに対するIgE抗体を作り出して反応する現象です。
この現象のことを抗原抗体反応と呼びます。
IgE抗体が過剰に反応を起こすことによって、蕁麻疹やアナフィラキシーショックなどの症状を引き起こします。
IgE抗体とは免疫細胞の一種
先ほどから出てきているIgE抗体ですが、IgE抗体ってなに?と疑問に思った人もいるかもしれません。
IgE抗体とは、免疫グロブリンの一種であり、人間のような脊椎動物の血清や体液に存在するたんぱく質です。
免疫グロブリンは抗原と闘う機能があるので、アレルギー体質の人は血清中のIgEの数値が高くなります。
手術用の手袋もラテックス製品
ラテックス製品は、日常生活の中で身近にあるものが多いため注意が必要になります。
手術で使用する手袋もラテックス製品なので、手術を行う際はラテックスフリーのものを全員着用して手術を行わなければなりません。
そのほかにも、カテーテルや絆創膏、コンドーム、駆血帯などもラテックス製品です。
ラテックスが皮膚と接触することで引き起こされる
ラテックス手袋を着用したまま手術を行うと、手袋などに残留したアレルゲンが皮膚と接触し汗によって水溶性蛋白質が溶出します。
この時に手袋にまぶしてあるパウダーによって皮膚の表面に傷がつきアレルゲンが進入しやすくなります。
粘膜からは溶出したアレルゲンが吸収されやすくなり、アレルギー反応を起こします。
特にゴム手袋をした状態で患者さんの粘膜や体腔に直接触れるとアレルギーを引き起こしやすくなります。
そして、手袋にまぶしてあるパウダーにもラテックス抗原が付着して、空気中に浮遊して吸入アレルゲンの危険性があります。
ラテックスアレルギーの時の対処法
ラテックスアレルギーは即時型アレルギーであり、アナフィラキシーショックなどを引き起こす危険性もあるため予防策をとることが必要になります。
ラテックスアレルギーの患者さんに対する予防策は、各手術室でマニュアル化されているところが多いので、内容をしっかり把握しておくことが大切です。
ラテックスアレルギーの手術の場合は、基本的にラテックスフリーの物品を準備し、アナフィラキシーショックに対応できる薬剤、心肺蘇生に必要な物品を確認しておきます。
手術室内にも張り紙などを行う
ラテックスフリーの物品を準備するだけでなく、ドクターやスタッフ全員が認識できるよう手術室内や手術室の扉などにラテックスフリーであることが分かるよう張り紙などを行います。
ラテックスアレルギーは情報収集が重要
ラテックスアレルギーの手術の場合は、事前にカルテなどにアレルギーが記載されてあることが多いです。
しかし、術前訪問などで患者さんから直接事前の情報収集を行うことで、インシデントを防ぐことができます。
食物アレルギーもラテックスアレルギーの危険性がある
患者さんの中には食物アレルギーを持っているという人もいますが、食物アレルギーだからラテックスは大丈夫と思ってはダメです。
実は、バナナやキウイなどの食物アレルギーを持っている人は、ラテックスアレルギーを起こす危険性が高いのです。
ラテックスアレルギーを起こす可能性が高い食品は以下の通りです。
- クリ
- バナナ
- アボガド
- キウイ
- イチジク
- パイナップル
- パパイヤ
- パッションフルーツ
- モモ
- 西洋梨
- クルミ
- ヘーゼルナッツ
- アーモンド
- グレープフルーツ
- メロン
- イチゴ
- ジャガイモ
- トマト
- ほうれん草
- レタス
- セロリ
- スパイスなど
このように食物がラテックスアレルギーを引き起こすことを、ラテックスフルーツ症候群と言います。
植物性の食品は、ラテックスと類似する蛋白質を有しているため、ラテックスと接触した時にラテックスアレルギーを引き起こすのです。
何度も手術を受けている人も要注意
アレルギーだけでなく、そのほかの要因によってラテックスアレルギーが引き起こされることもあります。
- 原因不明のアナフィラキシーショックを経験したことがある人
- 歯科治療や婦人科的な診療、あるいは風船・コンドーム・天然ゴム手袋への接触など、蕁麻疹やかゆみを経験したことがある人
- 何度も手術を受けたことがある人
このような要因に当てはまる人はラテックスアレルギーの可能性がある人です。
また、ラテックスアレルギーを起こす可能性が高い人の要因は以下の通りです。
- パウダーが塗布された天然ゴム製の手袋を使用している人や空気中に飛散したラテックス抗原に暴露される可能性がある職業についている人
- バナナやキウイ、アボガドなどの植物性食品アレルギーに対するアレルギー反応を経験したことがある人
- 天然ゴム製手袋に対する接触性皮膚炎を経験したことがある人
これらの要因に当てはまる人はアレルギーを引き起こす危険性が高く、手術の際は注意しなければなりません。
特に、手術室で働く看護師などはラテックス製のゴム手袋に触れる機会が多いため、ラテックスアレルギーを起こすリスクが高いのです。
そして、全身的な反応を起こす危険性が高い人も注意が必要です。
- 繰り返し手術を受けてきた人の中で、二分脊椎症などの骨髄異形成や泌尿生殖器の先天性異常のために生後間もなく繰り返し手術を受けてきた人。または、医療用具・機器による処置を繰り返し長期に渡って受けてきた小児の患者
- 原因不明なアレルギー反応や喘息発作などラテックスアレルギーに相当するような症状を手術中に経験した人
- ラテックス抗原特異IgE抗体が陽性の人、または、ラテックス抗原を用いたブリックテストが陽性の人
- 天然ゴム製品と接触した際に、蕁麻疹やアレルギー性結膜炎、気管支喘息、気管支喘息様症状などの即時型アレルギー反応を経験したことがある人
インシデントを起こさないために
ラテックスアレルギーはラテックスだけでなく、植物性食物アレルギーにも反応するため事前の情報収集が大切になります。
ラテックスアレルギーを予防するためには、どの様なものがアレルゲンで危険なのかをしっかり把握しておく必要があり、知識を身につけておくことで安全に手術を行うことができます。
ラテックスアレルギーはアナフィラキシーショックなど生命に関わる危険性が高いため、患者さんから細かい情報収集を行い予防しましょう。
基礎疾患の勉強にオススメ
ラテックスアレルギーなどは基礎疾患となるため、しっかり把握しておくことが必要になります。
患者さんの中には、アレルギーであることを自覚していない人もいるため、細かい情報収集がインシデントを予防に繋がります。
この参考書では、手術室で働くナースが知っておきたい20の基礎疾患について詳しく紹介されています。
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