手術室では様々な手術が行われますが、時には術中に術式変更などのイレギュラーが起こることがあります。
最近では腹腔鏡下で行われる手術も増えており、腹腔鏡の手術がメジャーになっています。
しかし、腹腔鏡下で行われる手術では、開腹手術に移行する可能性もあるため対応できるようにしておくことが大切です。
コンテンツ
腹腔鏡下手術とは内視鏡を使って行う手術のこと
腹腔鏡下手術とは、腹腔内に小型カメラである内視鏡を使用して行われる手術のことです。
開腹手術とは違い、手術の時は5cmほどの傷を4箇所開けて行うため、手術創も小さくて済むことが特徴です。
術中は内視鏡のカメラを見ながら操作を行いますが、術野が限られてしまうため出血などの合併症も起こりやすいです。
- 手術創が小さく、早期退院しやすい
- 術中に腸管が空気に触れないため全身状態の回復が早い
- 術後の癒着が少ない
- 美容面で優れている
- 適応疾患が限られている
- 手術の難易度が上がる
- 重篤な合併症のリスクが高い
- 手術時間が開腹手術より長い
腹腔鏡で行われる手術
腹腔鏡は主に消化器外科や婦人科の手術で行われます。
消化器外科
- 腹腔鏡下胃切除
- 腹腔鏡下胆嚢摘出術
- 腹腔鏡下虫垂切除術
- 腹腔鏡下食道全摘術
- 腹腔鏡下腸切除術
- 腹腔鏡下肝臓切除術
婦人科
- 腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術
- 腹腔鏡下子宮全摘術
腹腔鏡の合併症
腹腔鏡で行われる手術には、以下のような合併症があります。
- 出血
- 他臓器への損傷
腹腔鏡下で行われる手術は視野が限られているため、他臓器への損傷や出血に対応が難しく開腹手術に移行するケースもあります。
腫瘍が摘出できず開腹手術に移行したケース
手術名:腹腔鏡下卵巣摘出術
予定通り腹腔鏡下卵巣摘出術で手術がスタートし、腹腔鏡で腫瘍を確認したところ20cmほどの大きさでした。
内容物を吸引して摘出する方針で手術は進行しましたが、内容物の粘稠度が高く吸引できず、開腹手術へと移行。
カメラポートの部分を開腹して、無事に腫瘍を摘出することができました。
開腹手術への対処法
腫瘍の大きさと吸引ができない時点で開腹手術へ移行する可能性が高いと考え、開腹手術の可能性があると外回りナースに伝えていました。
癒着がひどく開腹手術へ移行したケース
手術名:腹腔鏡下胆嚢摘出術
手術の予定は腹腔鏡下胆嚢摘出術でしたが、数年前に開腹手術の既往歴がある患者さんでした。
手術は予定通り腹腔鏡で始まり、いざ内視鏡で腹腔内を覗くと癒着がひどい状態でした。
最初は鉗子で癒着部分の剥離を行なっていましたが、視野も狭く時間もかかりリスクが高くなるという判断で開腹手術へ移行。
開腹手術で無事に胆嚢摘出術が終了しました。
開腹手術への対処法
開腹手術の既往歴があったので、開腹手術の可能性が高いと考え普段以上に物品の準備を徹底していました。
手術が開始されてから癒着の状態を見て、すぐに開腹手術への術式変更の可能性を外回りナースに報告。
出血が止まらず開腹手術へ移行したケース
手術名:腹腔鏡下肝臓摘出術
肝臓腫瘍の手術で腹腔鏡下肝臓摘出術が行われました。
手術自体は順調に進み肝臓腫瘍を摘出しましたが、切離部分からの出血が止まらず。
電気メスで何度か止血を試みましたが、出血が続き安全を考慮して開腹手術へ移行しました。
開腹して肝臓の切離部分にシート状生物学的組織接着・閉鎖材を使用して止血を行い、無事に手術は終了しました。
開腹手術への対処法
手術は順調に進んでいたのですが、切離部分の出血が止まらないため、開腹手術に移行するかもと外回りナースと相談していました。
腹腔鏡の手術から開腹手術に移行するときのポイント
腹腔鏡で行われる手術が増えていますが、準備を行う時は必ず、開腹手術に移行する危険性があると考えながら行うことが大切です。
また、開腹手術の既往歴がある患者さんは癒着していることが考えられるため、開腹手術への移行の可能性が高くなります。
術前の情報収集をしっかり行うことで、手術中のイレギュラーにも対応することができます。
術中に術式変更の可能性がある場合は、早めに外回りナースに声をかけて相談しておくとスムーズに対応できます。
手術中のイレギュラーに対応するために
手術中は、術式変更などのイレギュラーが起こることも多いです。
手術に慣れていない新人ナースは、イレギュラーな状況に慌ててパニックになってしまうこともあると思います。
落ち着いて対応するためには、起こりうる可能性を予測して、対処法を知っておくことが大切です。
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