手術によっては術後に腹腔内にドレーンを留置して病室に帰る患者さんもいますが、そのドレーンはどの位置に留置されているか把握できていますか?
終了後に先輩から「さっきのドレーンはどこに入れてた?」なんて聞かれて、答えられなかった経験をした人もいるかもしれません。
術中操作やドレーンの位置を把握できていなければ、病棟への申し送りの際に困ってしまいます。
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ドレーンは術後の管理のために留置する
お腹を開ける開腹手術の際は、手術終了前にドレーンを留置することが多いです。
手術後にドレーンを留置する目的は、術後の経過を把握するためです。
ドレーンを入れる部位は、手術によって変わってきますが、切除手術などを行うと腹腔内に空間ができてしまいます。
その空間部分に血液や組織液などが貯留して、感染の原因などになるためドレーンから排液を促します。
ドレーンによって腹腔内の状況が分かる
術後は傷を閉じてしまうため、腹腔内の情報が分かりません。
そのため、ドレーンからの排液によって、術後感染を起こしていないかなどが分かります。
ドレーンからの出血が多い場合などは、腹腔内で出血が起きていることも考えられます。
腹腔内の治療経過や術後の情報を得るために、ドレーンを入れて手術を終えるのです。
主な術式と一般的なドレーン留置部位
- 胃全摘術(ルーワイ法)→ウィンスロー孔・左横隔膜下・脾周囲
- 幽門側胃切除(ビルロートI法)→ウィンスロー孔
- 結腸右半切除→右傍結腸溝・モリソン窩・結腸肝彎曲部
- 結腸左半切除→左傍結腸溝
- S状結腸切除→ダグラス窩・左傍結腸溝
- 低位前方切除術→仙骨全面
- 肝切除術→ウィンスロー孔・右横隔膜下
- 胆嚢切除術→肝下面・モリソン窩・結腸肝彎曲部
- 膵頭十二指腸切除→肝管空腸吻合部・膵管空腸吻合部
- 急性虫垂炎→右傍結腸溝・右腸骨窩
使用されるドレーンの種類
使用されるドレーンには2種類の方法があります。
- 開放式ドレーン
- 閉鎖式ドレーン
開腹手術などでは感染面のリスクを考えて、閉鎖式ドレーンを使用することが多いです。
ペンローズドレーン
手術室で働いていると、必ず遭遇するドレーンの種類です。
ペンローズドレーンはドレーンの名前であり、開放式ドレーンとして使用されます。
見た目はストローのようですが、感触は柔らかく簡単にハサミで切ることができます。
ペンローズドレーンの内面による、毛細血管現象を利用してドレナージを行います。
ドレーンの先端はガーゼで覆ったり、パウチで貼り付けたりして使用します。
- 開放式
- フィルム型のドレーン
- 先端はガーゼ保護
- 4.0mm〜12mmまでサイズがある
- 漿液性のサラサラとした体液の排出に向いている
- 虫垂切除などで使用される
プリーツドレーン
チューブ型のドレーンの種類の中に、プリーツドレーンがあります。
チューブ状になっており、感触は柔軟性のあるゴムに近く丈夫な作りになっています。
プリーツドレーンは、閉鎖式のドレーンなので先端を排液バッグに接続して使用されます。
- 閉鎖式
- 排液バッグに接続
- 直径サイズがある
- 血液や組織液、膿などの排出に適している
- 内側にヒダが付いているので潰れないようになっている
- 開腹手術で使用される
デューブルドレーン
こちらもチューブ型のドレーンの1種であり、閉鎖式ドレーンです。
見た目はプリーツドレーンと同じくチューブ状であり、折れ曲りにくく丈夫な作りになっています。
デューブルドレーンの特徴は、先ほどのプリーツドレーンの構造に似ていますが、内面に細かい孔が付いているので毛細血管現象も兼ね備えているというものです。
ドレーンとバッグがセットになっているものが多く、外科の手術では多く使用されます。
- 閉鎖式
- バッグとセットのものもある
- 血液や組織液、膿などの排液に適している
- 内腔に孔がありで毛細血管現象も兼ねている
- 直径サイズがある
- 開腹手術で使用される
開腹手術で使用される主な腹腔ドレーンを3種類紹介しましたが、手術によっては、特殊なドレーンを使用したりすることもあります。
ドレーンチューブの固定は絹糸
手術終了前にドレーンチューブを留置して終わりますが、ドレーンチューブの固定は、絹糸で行います。
手術で使用される糸には色々な種類がありますが、吸収糸ではなく、必ず絹糸で固定を行うので、準備をしておきましょう。
ドクターによってはナイロン糸を使う場合もあります。
吸収糸で固定をしてしまうと、ドレーン留置部分の糸が吸収されてしまい、固定ができなくなってしまう危険性があるためです。
手術室で使用するドレーンを理解するために
手術室では様々な手術が行われますが、手術に合わせてドレーンが留置されます。
開腹手術では複数のドレーンを留置するため、留置部位もしっかり把握しておきましょう。
ドレーンの留置部位は、病棟への申し送りでも重要になります。
ドレーンの勉強にオススメ
手術室で行われる一般外科の手術では、腹腔ドレーンが留置されます。
術中はバタバタしているので、留置部位を見て確認することが難しい場合もあります。
この参考書では、手術で使用されるドレーンが詳しく紹介されているので理解しやすいです。