生理食塩水で電気メスが使えないのはなぜ?TURと還流液のキホン

泌尿器科の手術では、膀胱内の腫瘍や肥大した前立腺の切除のために膀胱内からアプローチを行うことがあります。

膀胱内を操作するためには、手術用の水を使って膀胱内を膨らませながら手術を行いますが、電気メスを使用する時は生理食塩水は使用できません。

生理食塩水は電気を通してしまうため、術式によって還流液を選択することが必要になります。

今回は泌尿器科の手術で使用される還流液と電気メスの関係について見ていきましょう。

TURとは経尿道的膀胱手術のこと

TURという言葉を聞いたことがないという新人看護師もいるかもしれませんが、泌尿器科で行われる膀胱内の手術のことを指しています。

経尿道的膀胱手術とは、尿道から膀胱内の腫瘍などを切除したりする方法です。

開腹手術ではなく、尿道からアプローチするという特徴があります。

この経尿道的膀胱手術には以下のような手術があります。

  • -BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)
  • TUR-P(経尿道的前立腺切除術)
  • TUL(経尿道的尿路結石破砕術)
  • RP(逆行性腎盂造影)
  • 尿管ステント留置

膀胱鏡を使う時は還流液が必要になる

尿道から膀胱内に内視鏡を入れる際には、中を膨らませる還流液が必要になります。

膀胱はただの袋になっているため、還流液を還流させて風船のように膨らませて観察を行いやすいようにします。

このTURの手術で使用されるのが生理食塩水や「ウロマチック®️」と呼ばれる専用の還流液です。

還流液は2種類ある

ウロマチック®️」泌尿器科の手術で使用するために成分が調整された還流液です。

TURの手術の際には生理食塩水とウロマチック®️の2種類を準備しますが、術式によって生理食塩水を使う場合とウロマチック®️を使う場合などの使い分けが必要な場合があります。

還流液の使い分けは電気メスの使用の有無

生理食塩水とウロマチック®️の使い分けに関してですが、簡単に説明すると術中に電気メスを使うかどうかという点です。

  • 電気メスを使う場合→ウロマチック®️
  • 電気メスを使わない場合→生理食塩水

術式での判別としては、TUR系(経尿道的切除術)の手術では腫瘍などを電気メスで焼き切るためウロマチック®️を使用することが多いです。

TUL(経尿道的尿路結石破砕術)やステント留置などは電気メスを使わず膀胱内を覗くだけなので、コストも安い生理食塩水を使用します。

生理食塩水は電気を通す性質がある

TUR系(経尿道的切除術)の時はウロマチック®️を使用しますが、なぜ生理食塩水ではないのでしょうか?

その理由は、生理食塩水は電気を通してしまう性質があるからです。

純粋な水などは電気を通しませんが、塩が含まれている生理食塩水は溶液中で塩素イオンとナトリウムイオンに分解されて電気を通す性質を持ちます。

生理食塩水で電気メスを使うと効率が悪くなる

生理食塩水で満たされた状態で電気メスを使用してしまうと、切除部位だけでなく本来焼かなくて良い部位まで焼けてしまうことも。

また、余計な部位に電気が流れてしまってエネルギー効率が悪くなってしまいます。

そのため、電気を通さないウロマチック®️という内視鏡専用の液体が使用されているのです。

ウロマチック®️は水と糖を溶かした液体

生理食塩水は電気を通してしまうという特性がありますが、ウロマチック®️は電気を通さないため電気メスを使った施術を行うことができます。

なぜウロマチック®️は電気を通さないのでしょうか?

その理由は、ウロマチック®️はウロマチックS泌尿器科用灌流液3%という泌尿器科手術用潅流液であり、水とソルビトールという糖の一種を溶かした溶液です。

糖は水に溶けてもイオン化しないため電気を通しません。

ウロマチック®️を使うことで安心して膀胱の切除術を行うことができますが、塩さえ入ってなければどの溶液を使用してもいいんじゃないの?などと考えた人もいるかもしれません。

ウロマチック®️を使用するのには、浸透圧が関係しているのです。

ウロマチック®️の浸透圧は体液に近い

浸透圧とは、濃度の濃い液体と濃度の薄い液体の間に働く力のことです。

例えば、キュウリなどを塩につけておくと水分が抜けてシワシワになりますよね。

これは塩をかけることによって、キュウリの水分が濃度の濃い塩の方に移動してしまうからです。

この現象と同じで、膀胱鏡の手術で使用される還流液も濃度が人間と近いものでなければ、人体に影響を及ぼしてしまうのです。

そのためにウロマチック®️のように、糖を溶かしたものや生理食塩水のように塩を溶かして人間の体液に近い濃度を保っているのです。

生理食塩水は水に0.9%の食塩を溶かしたものであり、この濃度は人間の体液と同じ濃度になるため、生理食塩水と呼ばれています。

合併症としてTUR症候群が起こる

泌尿器科で行われる膀胱鏡を使った手術で起こりやすい合併症が、TUR症候群です。

別名、TUR反応や水中毒などと言われることもあります。

術中で使用する還流液が体内に吸収されてしまい、低ナトリウム血症などの電解質異常を起こしてしまう合併症です。

TUR-Pの手術で起こりやすい

特にTUR症候群が起こりやすいと言われている手術が、TUR-P(経尿道的前立腺切除術)です。

その理由は、オペ時間も長く還流液を大量に使用するためです。

また、広範囲に渡って電気メスで切除を行なっていくため血管の破綻も大きく、そこから還流液が体内に吸収されやすいからです。

術中にTUR症候群の症状が見られたら?

術中に血圧の変動が見られ、ショック状態になるという症状が見られたら、医師に報告を行い、血ガスを調べて、昇圧剤やナトリウムを投与したりします

術中に患者さんのバイタルサインが変動した場合は、TUR症候群を疑い正しい対処を行いましょう。

TURのキホンを理解するために

泌尿器科ではTURなど膀胱内を操作する手術が行われます。

術中で使用される還流液には、TUR症候群などの合併症を引き起こしてしまう原因にもなってしまうため、しっかり理解しておくことが大切です。

また、使用する機器や術式に合わせて使用する還流液を準備しておくことも必要です。

生理食塩水で電気メスを使用してしまうと思わぬトラブルにつながってしまうため、注意が必要になります。

泌尿器科の勉強にオススメ

TURの手術では還流液の使い分けなどの知識も必要になります。

この参考書では、泌尿器科で行われる手術の術式や器械などが詳しく紹介されています。

今回紹介した、TUR-Pについても写真で載っているので理解しやすいです。

新人看護師の勉強やオペの事前学習にも活用できる1冊です。

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