術中輸液で使用されるリンゲル液の目的と根拠

手術を受ける時は、必ず静脈ルートを確保して術中輸液を管理しながら手術を進めていきます。

術中で使用される輸液は、リンゲル液と呼ばれるものですが、なぜリンゲル液を使用するのか知らない人も多いと思います。

術中に使用される輸液にも、使用する根拠があります。

今回は、術中輸液で使用されるリンゲル液の目的と根拠についてお伝えします。

術中輸液の目的はINOUTの補正を行うため

術中に行われる輸液の目的は、手術侵襲によるINOUTのバランスを補正する目的があります。

手術を受ける患者さんは、手術当日は絶飲食の状態です。

その状態で手術侵襲が加わると、細胞外液の喪失や電解質バランスの異常が生じてしまいます。

バランスを補正する目的を踏まえて、麻酔科医は術中輸液でどれくらい輸液が必要なのかを考え、術中の輸液管理を行います。

術中輸液の投与は予測と計算が大切

術中は麻酔科医が輸液管理を行っています。

投与する輸液が多すぎても患者さんの体に負担がかかり、少なすぎると循環血液量が減ってしまうため、的確な分量を投与する必要があります

輸液量を計算する時に考えるべきポイントは以下の通りです。

  • 術前の絶飲食の時間 
  • 術前の脱水
  • サードスペースへの喪失
  • 輸血削減のための輸液
  • 全負荷増大のための輸液

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

術前の絶飲食の時間

手術を受ける患者さんは、手術前日の夜から絶飲食が開始されます。

手術が午前中に行われる場合は、手術室に入室するまで約8時間ほど、何も口にしていない状態です。

絶飲食の状態ですが、体内では尿などで水分は失われているため、成人では500mm〜800mmほどの輸液が必要になります。

術前の脱水

術前の絶飲食の影響も考慮して、乏尿であれば体重の5%が失われたとみなして輸液に夜補正を行います。

尿量が50ml/h以上であれば循環血液量は回復したと考えます。

サードスペースへの喪失

手術侵襲によりカラダがストレスを受けると、血管の透過性が亢進して血管内からサードスペースに水分が移動してしまいます。

サードスペースとは、細胞内でも血管内でもない場所に移動してしまうことです。

この移動によって循環血液量が低下してしまい、血圧低下などを引き起こします。

術中輸液を投与する際には、このサードスペースへの移動を考えて輸液を選択する必要があります。

輸血削減のための輸液

手術中は出血がありますが、500ml〜1000mlの出血であれば輸血ではなく輸液で対応します。

手術の進行に合わせて出血量が多くなると、クレンメを全開にして急速輸液を行います。

これは、出血量を補うためには、出血量の3倍の輸液が必要になるためです。

前負荷増大のための輸液

 

全身麻酔で行われる手術では、麻酔薬の影響により循環抑制作用があります。

循環抑制作用により、心拍出量が減少して血圧低下が起こります

術前に体液の不足がなくても、輸液の速度を速めて心臓の前負荷を増大し循環を安定させています。

術中は酢酸リンゲル液を使用する

酢酸リンゲル液ってなに?という人もいるかもしれません。

輸液バッグの入っている成分は分からない人も多いですよね。

患者さんに投与する輸液にはさまざな種類がありますが、手術中は主に酢酸リンゲル液という種類の輸液を使用します。

生理食塩水では補正できない

手術中などは出血もあるため、血液の成分と近い輸液を投与して輸液管理を行います。

血液に近い成分のものであれば、生理食塩水でも良いのでは?と思った人もいるかもしれません。

生理食塩水は体液とほぼ等張の性質がありますが、中に入っている成分はNaとClです。

これだけでは、体内の電解質のバランスが取れず補正することができません。

リンゲル液は細胞外液の電解質組成に近い

そこで、生理食塩水の成分にKとCaが添加してより血漿の電解質成分に近いものが、リンゲル液と呼ばれるものです。

リンゲル液は、電解質組成がNa<Clが特徴であり、手術時や出血性ショックなどに用いられます。

リンゲル液には、様々な種類があります。

リンゲル液の種類と特徴

リンゲル液にはNaやClが添加されていますが、血漿中に必要なHCO3-が含まれていません。

乳酸リンゲル液と酢酸リンゲル液

より血漿の成分に近いものを投与するために、リンゲル液にHCO3-の代わりに乳酸イオンや酢酸イオンを加えたものが、乳酸リンゲル液と酢酸リンゲル液です。

なぜ、乳酸と酢酸なの?と思った人もいると思います。

HCO3-は体内での酸塩基平衡を維持する物質であり、乳酸や酢酸は代謝されるとHCO3-になるため体内でアルカリ化剤として機能するのです。

病院によっては酢酸リンゲル液を使っているところや、炭酸水素イオンを加えた重炭酸リンゲル液も使われているところもあります。

肝障害のある患者さんへの使用は注意が必要

酢酸リンゲル液や乳酸リンゲル液は、細胞外液の組成に最も近い輸液です。

しかし、肝障害のある患者さんでは乳酸代謝ができず、乳酸リンゲル液の使用によって乳酸性アシドーシスを招くことがあります。

そのため、肝障害がある患者さんへの使用には注意が必要です。

術中の輸液管理を理解するために

普段は輸液のことを気にしたことがない人も多いと思います。

術中の輸液は、患者さんのカラダを維持するためや手術をスムーズに運ぶためには重要なものです。

術中に使用される輸液には、患者さんの症状や手術の進行具合に合わせて適切なものが選択されています。

術中輸液の勉強にオススメ

術中の輸液製剤について、詳しく知らない新人ナースもいると思います。

手術室では、患者さんの術中の管理も大切な看護の一つになります。

この参考書では、術中に使用される輸液製剤が詳しく紹介されているので、新人ナースの勉強にオススメです。

今回紹介したリンゲル液についても分かりやすく紹介されているので、勉強に活用できる1冊です。

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