単純子宮全摘出術(STH)の術式と手術の流れ

単純子宮全摘出術は婦人科の中でもスタンダードな手術になるので、新人の間から担当することが多いと思います。

単純子宮全摘出術は、子宮摘出後の膣の縫合が一番スピード感を求められる手術です。

そのため、ドクターによっては手術の流れが早く、スピードについていけないと感じる新人もいるのではないでしょうか?

単純子宮全摘出術は術式の流れが変わることが少ない手術なので、術式を覚えることでスピードにも対応できるようになります。

今回は、単純子宮全摘出術(STH)の術式と手術の流れについてお伝えします。

単純子宮全摘術(STH)は婦人科の基本的な手術の一つ

単純子宮全摘出術は子宮を全摘出するものであり、婦人科の手術の中でもスタンダードな基本手術の一つになります。

病院によっては、単純子宮全摘出術のことを”STH”と略して表記することもあり、これは(simple total hysterectomy)の略になります。

単純子宮全摘出術は子宮だけを摘出することが多いですが、症例によっては摘出範囲が広くなることもあります。

単純子宮全摘術+両側付属切除の場合もある

単純子宮全摘出術の手術の症例によっては、子宮だけでなく卵巣などの両側付属器切除を同時に行う場合もあります。

卵巣癌などの悪性腫瘍の場合は、症例に合わせて子宮と同時に摘出することもあります。

付属器切除を行うときはカルテに記載されているので、確認しておきましょう。

単純子宮全摘術(STH)の適応と手術時間

単純子宮全摘術(STH)の適応と手術にかかる時間を見ていきましょう。

単純子宮全摘術(STH)の適応 

単純子宮全摘術の適応は、良性腫瘍から悪性腫瘍まで幅広いことが特徴です。

  • 子宮筋腫
  • 子宮腺筋症
  • 子宮内膜症
  • 子宮体癌
  • 卵巣癌

これらの疾患が単純子宮全摘術の適応となります。

手術時間は2時間程度

単純子宮全摘術の手術時間は、約2時間程度で終わることが多いです。

ただし、手術の内容やトラブルによっては手術時間も長引くことがあります。

私が担当した子宮筋腫の手術では、筋腫が大きく摘出に難航し、手術時間が長くなった経験があります。

摘出された子宮と筋腫は人の頭よりも大きな巨大なものもありました。

また、婦人科の手術では腸管損傷や出血などのトラブルも起こりやすいので、トラブルが起こった時は手術時間が長くなる傾向があります。

単純子宮全摘術(STH)の麻酔方法と術中体位

ここでは、単純子宮全摘術の麻酔方法と術中体位を詳しく見ていきましょう。

麻酔は全身麻酔+硬膜外麻酔が多い

麻酔は全身麻酔+硬膜外麻酔のセットで行われることが多いですが、病院や施設によっては脊椎麻酔のみで実施されることもあります。

脊椎麻酔が適応されるのは、手術時間が短い場合が多いです。

私が働いていた手術室では、全身麻酔と硬膜外麻酔の併用パータンが普通になっていました。

術中体位は仰臥位で行われる

単純子宮全摘術の術中体位は仰臥位で行われ、上半身は両手開きで固定します。

術野が下腹部になるので、膀胱留置カテーテルの蓄尿バッグなどは頭側に配置して尿量チェックができるようにセッティングします

単純子宮全摘術(STH)の手術の流れ

単純子宮全摘術の大まかな流れは、下記の通りになります。

  • 麻酔導入、セッティング
  • 仰臥位に体位固定
  • 正中切開で開腹
  • 腹腔内観察、術野確保
  • 子宮を把持して子宮円索の切断
  • 広間膜前葉を切断し骨盤漏斗靭帯を処理
  • 膀胱を剥離する
  • 子宮動脈の処理
  • 膣の切断、子宮摘出、縫合
  • 出血確認、洗浄
  • 腹膜縫合、閉腹
  • 内診

それぞれの流れを細かく見てきましょう。

麻酔導入、セッティング

硬膜外麻酔が完了した後に全身麻酔の導入に移ります。

単純子宮全摘術の手術では輸血ルートを確保することは少ないですが、症例によっては指示があることもあるので準備しておきます。

仰臥位に体位固定

麻酔の導入が完了したら、仰臥位に体位固定を行います。

上半身は両手開きになるので腕の可動域に注意しながら、固定を行います。

正中切開で開腹(手術スタート)

セッティングなどが済んだらタイムアウトを行い手術スタートになります。

メスで下腹部を正中切開で開腹していきます。

使用する器械

メス、電気メス、ペアン、筋鈎、開創器、腸ベラ

腹腔内観察、術野確保

開腹できたら、腸ベラなどを使いながら腸管を避けて術野を確保します。

腸管を圧排するために濡らした紐付きガーゼなどを腹腔内に留置し、開創器をかけます。

この時に悪性疾患の場合は、腹水を採取して細胞診を行うことがあるため、シリンジと生食が必要になります。

細胞診の実施はカルテに指示が記載されていることが多いので、事前に確認して準備しておきましょう。

使用する器械

開創器、腸ベラ

子宮を把持して子宮円索の切断

子宮を把持しながら、吸収糸で子宮円索を結紮してクーパーで切断します。

骨盤内の深い部分になるので、必要があれば電気メスの先を長いものに交換します。

使用する器械

コッヘル、クーパー、電気メス

広間膜前葉を切断し骨盤漏斗靭帯を処理

広間膜前葉を切断して子宮周りの主要な血管などを把握して進め、骨盤漏斗靭帯を処理します。

骨盤漏斗靭帯は卵巣の動脈と静脈を含んでいるため、2重結紮で処理するので糸や針がすぐに手渡せるよう準備しておきましょう。

この時に尿管付近を触る操作になるので、尿管損傷を起こしやすいため血尿が出ていないかなどをチェックします。

使用する器械

クーパー

膀胱を剥離する

子宮頚部付近にある膀胱を膣の方に剥離して、十分に剥離できたら膀胱圧定鈎を使って膀胱を圧排します。

子宮を剥離する時に子宮周りの血管を損傷して出血することがあるため、注意が必要です。

使用する器械

膀胱圧定鈎、ペアン

子宮動静脈の処理

尿管の走行に注意しながら子宮動脈をコッヘルで把持して2重結紮処理を行います。

また、子宮の周囲にある静脈も結紮処理を行い、子宮周りから血管や組織を離していきます。

使用する器械

コッヘル、クーパー

膣の切断、子宮摘出、縫合

子宮が周囲の組織と離れ、切断できる状態であるかが確認できたら膣の切断を行います。

膣切断の操作が一番出血しやすいため、スピードが求められます。

膣部分にメスで切開し、クーパーを使用して切断していくと同時に、断面を把持するためリスターを素早く手渡します。

膣に触れたメスとクーパー、リスターは不潔の扱いになるため注意しましょう。

子宮が摘出されたら膿盆で受け、同時に糸を渡して膣断面を縫合します。

ドクターによっては子宮の前後を把握するために、ペアンや糸で目印をつけることもあるので検体についた器械を勝手に外さないように注意しましょう。

使用する器械

メス、クーパー、リスター

出血確認、洗浄

膣断面の縫合が終わったら、出血の確認を行い止血後に生理食塩水で洗浄を行います。

洗浄が終わったら閉創に移るので、ガーゼカウントを済ませておきましょう。

腹膜縫合、閉腹

骨盤腹膜を閉創し、閉腹前に癒着防止材を使用することも多いです。

内診

閉創が終わったら足を開いて内診を行いますが、この時に出血が見られた場合はガーゼを留置して退室することもあるため、申し送りで忘れないように伝えましょう。

使用する器械

クスコ、セッシ、ガーゼ

単純子宮全摘術(STH)のポイント

単純子宮全摘術は、子宮を摘出してから膣を縫合するまでの間が素早い対応が求められます。

子宮の受け取りや器械を渡すことなどバタバタとしてしまいますが、落ち着いて的確に行うことが大切です。

ドクターにもよりますが、コッヘルとペアンを使う機会が多いので返ってきた器械をしっかり把握しておくことが大切になります。

また、糸や針などは止血や結紮で使用するので、すぐに渡せるように準備しておきましょう。

また、膣切断に使用したメス、リスター、クーパーなどは不潔になるので、返ってきた器械の取り扱いにも注意が必要になります。

子宮は膀胱や尿管、腸管などの臓器とも近いため、血尿の有無などを確認しながらトラブルの早期発見に務めましょう。

単純子宮全摘術(STH)を理解するために

単純子宮全摘術の手術は術式の流れが大きく変わることが少ないので、器械出しの順番を覚えることで対応できます。

婦人科の手術は時間も短く手術操作もそれほど複雑ではないので、新人ナースが担当することが多いです。

まずは、手術操作の内容をしっかり理解して、どこで何の器械が必要になるかを勉強しましょう。

婦人科の手術はシンプルなものが多いので、新人ナースにも覚えやすいです!

婦人科の手術の勉強にオススメ

婦人科の手術はスピード感も求められる手術が多いので、苦手に感じている人もいるのではないでしょうか?

器械出しが覚えられない、自信がないと感じる人は、手術を見学させてもらうなど積極的に勉強して行きましょう。

この参考書は、婦人科の手術の術式や流れが写真付きで細かく紹介されているので、手術の流れが理解しやすいです。

今回紹介した単純子宮全摘術の内容も載っているので、これから手術に付く新人ナースの勉強や復習にも活用できる1冊です!

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