手術中の体位が皮膚トラブルを引き起こす!術中体位と褥瘡予防について

手術中は患者さんの意識がない状態で看護師が体位などを整えていきます。

この術中体位をしっかり行わないと手術が終わった後に皮膚トラブルが起こってしまうなどの術中トラブルにつながってしまいます。

特に手術室では意識のない患者さんの術中体位を整えるため、病棟の寝たきりの患者さんと違って頻回に体位交換もできないので褥瘡が出来やすい環境です。

長時間に及ぶ手術もありますが、術中に起こる褥瘡などの皮膚トラブルは、オペナースの体位固定とケアによって予防することが出来ます。

今回は術中トラブルの原因になりやすい術中の体位と褥瘡予防についてお伝えします。

手術中は褥瘡などの皮膚トラブルが起きやすい

 
褥瘡は、病棟で健康状態が良くない患者さんや寝たきりの患者さんに起こりやすいというイメージを持っている人もいると思います。
 

手術室では患者さんの健康状態に関わらず皮膚トラブルが起こりやすいです。

術中体位によって皮膚トラブルが引き起こされてしまいますが、褥瘡などの皮膚トラブルはどのようなメカニズムで起こってしまうのでしょうか?

褥瘡の発生のメカニズムを押さえておきましょう。

褥瘡の原因は血行不良によるもの

 

褥瘡が起こる原因には大きく分けて、皮膚を物理的な圧迫による直接的要因と健康状態などによる間接的要因があります。

褥瘡はこの2つの要因が相互に影響して発生するのです。

直接的要因

直接的要因とは、カラダに加わった外力による皮膚や軟部組織への持続的な圧迫です。

皮膚にリヒカなどの棒などが一定部位に当たってしまい圧迫が加わると、皮膚や軟部組織の血管が圧迫されてその部分の血流が途絶えてしまいます。

特に骨が出ている部分には体圧が集中しやすく、圧力などにより循環障害が増大してしまいます

血流が途絶えたままの状態が続いてしまうと、不可逆的な組織壊死が生じてしまい褥瘡となってしまいます。

間接的要因

間接的な要因としては、低アルブミン血症などの原因となっている低栄養状態や痩せなどが挙げられます。

全身的要因
  • 低栄養:程アルブミン血症による浮腫や皮膚の弾力性の低下など
  • 痩せ:皮下組織や筋肉組織の減少により骨突出が起こる
  • 加齢、基礎疾患:骨粗鬆症や糖尿病など
  • 薬物投与:抗がん剤、ステロイド剤などによる易感染性、創傷治癒遅延など
身体的要因
  • 加齢による皮膚の変化:皮脂分泌低下による乾燥や皮膚が薄くなっている
  • 摩擦やずれ;体位変換時などの摩擦やずれが生じる
  • 局所の皮膚疾患:皮膚感染症、炎症生皮膚疾患など

これらの間接的な要因が原因で褥瘡のリスクが高くなるのです。

手術中は長時間同一体位をとるため、健康状態に問題がない患者さんであっても体位の固定次第で皮膚トラブルが起こってしまうリスクがあります。

外回り看護師は褥瘡を予防するためにも、術前の情報収集の段階で、褥瘡のリスクアセスメントを行い対策を実践することが褥瘡予防につながるのです。

では、実際に手術中に行われる術中体位と褥瘡好発部位を押さえておきましょう。

術中体位は手術に合わせて選択される

手術中の体位固定は色々な種類がありますが、行われる手術によって選択されます。

術中体位と主な手術

  • 仰臥位:開腹手術(胃全摘、腸切除術、子宮全摘術、カイザーなど)
  • 腹臥位:腰椎の手術など(腰椎椎体間固定術など)
  • 側臥位:足や腕の手術(全人工股関節置換術など)
  • 砕石位:下半身の手術(下結腸切除術、TURなど)
  • ジャックナイフ:肛門部位の手術(肛門腫瘍切除など)
  • パークベンチ:脳外科の手術(脳腫瘍摘出術など)

これらが主な手術体位ですが、それぞれの体位の特徴を押さえておくことが大切です。

体位固定と褥瘡予防のポイントそれぞれの体位固定と褥瘡予防のポイントを見ていきましょう。

仰臥位

仰臥位は仰向けの姿勢で、開腹手術や帝王切開など科目を問わずスタンダードの基本的な手術体位になります。

仰臥位の褥瘡好発部位

  • 後頭部
  • 肩甲骨部
  • 肘頭部
  • 仙骨部
  • 踵骨部

仰臥位では主に背中側に皮膚トラブルが起きやすくなるため、褥瘡予防のポイントは、褥瘡好発部位の除圧を図ることです。

後頭部は挿管チューブが屈曲しない高さの枕を選び、肩などは手術によって枕を入れます。

下半身は太ももとふくらはぎの下に枕を入れて踵骨部を浮かせるようにします。

この時に腓骨神経麻痺を予防するためにも膝の裏は圧迫しないように気をつけましょう。

器具と皮膚の接触を避ける

また、リヒカや支柱台などが、患者さんのカラダに接触していないかを確認するが大切です。

開腹手術の場合はオイフよけのリヒカを上半身に立てることが多いですが、腕や脇腹などに固定器具が当たっていないかなどを確認しましょう。

もし器具があたりそうな場合は、器具と皮膚の間にタオルなどを挟み、直接当たらないようにします。

そして、カラダの一部が圧迫されている部位などがあれば、タオルや緩衝マットなどを使って除圧していきます。

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腹臥位

腹臥位はうつぶせの状態で行われる手術であり、主に整形外科の脊椎椎体間固定術やアキレス腱など背中側の手術で使用される手術体位です。

腹臥位の褥瘡好発部位

  • 耳介部
  • 頬部
  • 上腕骨頭部
  • 胸部
  • 陰部(男性)
  • 膝蓋骨部
  • 足指部

腹臥位では主にカラダの前面部分で皮膚トラブルが起きやすくなります。

麻酔導入後にドクターとスタッフで腹臥位へと体位変換を行いますが、圧迫部位の保護が大切になります。

背中の手術の場合は、特殊な枕などを使って胸部を持ち上げることもあるため、どうしても一箇所に圧迫が集中してしまいます。

そのため、病院によっては皮膚を保護するテープなどを貼って皮膚と枕が直接当たらないように刺激を減らすなどの工夫をしているところもあります。

そして、うつ伏せになることでカラダについているコードやルートなども圧迫してしまう原因となってしまうので、ルート刺入部位や、バルンルートが太ももの下敷きになっていないかなどきっちり確認しましょう。

側臥位

 
側臥位は横を向いて寝た状態であり、主に整形外科の人工股関節置換術などの側面からアプローチする手術で行われます。 

側臥位の褥瘡好発部位

  • 耳介部
  • 上腕骨頭部
  • 肋骨部
  • 腸骨部
  • 大転子部
  • 膝関節内外顆部
  • 足関節内外顆部
 
横を向いた部位になるため、カラダの側面に皮膚トラブルが起きやすくなっています。
 
整形外科の人工股関節置換術などは特殊な枕を使用して足を高くするため、下になっている足の固定が重要になります。
 
足を高くする枕が下の足に直接当たらないようタオルや緩衝材で保護を行い、除圧も同時に行います。
 
特に大転子部などは皮膚トラブルが起きやすいので皮膚の保護をしっかり行う必要があります。
側臥位も麻酔導入後に体位変換を行うので、コードやルートなどが下敷きになっていないかきちんと観察しておきましょう。

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砕石位

砕石位は、仰向けで足を広げる体位ですが、主に下半身の手術の時に使用される体位です。

砕石位の褥瘡好発部位は主に仰臥位と同じですが、足を上にあげて広げて固定するため仙骨部に仰臥位よりも圧力がかかってしまいます。

仙骨部位に保護テープを貼るなど直接肌とマットとの摩擦や刺激を減らすことで表皮剥離などを防ぐことができます。

足を広げる際にも可動域と器具が当たっていないかなどの確認も重要です。

ジャックナイフ

ジャックナイフはうつぶせの状態になり、腰から折り曲げるような体位で主に肛門腫瘍などの手術で使用される体位です。
 
手術によっては泌尿器科の腹腔鏡下腎臓摘出術などの場合は、側臥位の状態で折り曲げるジャックナイフの体位で行うことがあります。
 
ジャックナイフの体位を固定する時にも、麻酔導入後にドクターやスタッフで腹臥位にしてからベッドを機械操作で折り曲げていきますが、機械操作時にカラダとシーツやマットがずれてベッドに直接肌が圧迫されることもあるので注意が必要です。

 

術中の皮膚トラブルを予防するために

 
 
術中の皮膚トラブルの多くは、手術時間の長さや体位固定時の除圧が足りないことで発生しやすくなります。
 
手術中の患者さんは発言や意思表示をすることができないため、オペナースが快適な術中体位を整えることが必要です。
 
術中の皮膚トラブルや褥瘡などは、患者さんの術後の経過にも影響してきます。
 
術後は栄養状態も低下しているので治癒の遅延や症状の悪化が考えられますよね。
 
手術を受ける患者さんが安心して手術を受けられる環境を整えることがオペナースに求められる役割なのです。

手術のポジショニングの勉強にオススメ

新人看護師の中には、手術体位の固定方法がよく分からない人もいると思います。
 
術中の褥瘡を予防するためには、正しいポジショニングを理解しておくことが必要になります。
 
この参考書は、手術体位について要点が分かりやすくまとめられているので、勉強会にも活用できます。
 

圧迫部位についてのデータも紹介されているので、看護研究にも使える1冊です。

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